緊張を味方につける

 

 

まずは問題です。

あなたは大事な試験の直前で、とても緊張しています。手のひらは汗でびしょびしょ。心臓はバクバク鳴っていて、お腹が締め付けられるように痛くなっています。(※1)そんな時、

 

A「自分は緊張している」

B「自分は落ち着いている」

 

AとBのうち、どちらの言葉を自分に言い聞かせると良いと思いますか。また、それはなぜでしょうか。ちょっと考えてみてください。

 

試験の最中に緊張や不安を感じると、集中力がなくなり、実力が発揮できなくなる。だから、まずは心を落ち着かせて、緊張を和らげることが大事だ。ふつうはそんな風に考えるもしれません。でも、目の前の試験が大事なものであればあるほど、不安な気持ちを抑えるのは難しくなります。むしろ、落ち着かないといけないと思うことが、余計に不安や焦りを生み、その結果、不安感に圧倒されてしまうかもしれません。

 

そもそも緊張することは悪いことなのでしょうか。人間の身体は、ストレスのある状況に置かれたとき、それに対処するために、様々な反応を自動的に行います。例えば、心臓の鼓動が速くなるのは、全身に血液を巡らせ、筋肉や脳に十分な酸素を届けるために起こることです。また、この反応は主にアドレナリンというホルモンの作用によるものですが、アドレナリンそのものにも脳を覚醒させ、集中力を高める働きがあります。強いストレスのかかった状況下でも、適切な判断や行動ができるように、身体がエネルギーをたくさん生み出そうとする。そのときに起こるさまざまな身体反応が「緊張」の正体なのです。(医学用語では「ストレス反応」といいます。)つまり、あなたが緊張しているとき、身体はあなた自身を必死で助けようとしているのです。

 

緊張や不安は必ずしもテストの成績に悪影響を与えないということや、緊張をうまく利用することによって、むしろ良いパフォーマンスを発揮することができるということが、最近の研究によってわかってきています。例えば、ハーバード大学で行われたある実験では、「ストレス反応は自然な生理現象であり、困難な状況に対処するのに有利に働くことがある」ということを教えられたグループと、なにも教えなかったグループに、それぞれ学力テストを受けさせました。すると、前者のグループは後者に比べて、とくに数学の成績が大きく向上したそうです。(※2)

 

ということで、もし試験の直前に緊張や不安でいっぱいになってしまったら、心の中でこうつぶやいてみましょう。きっと良い結果が出せるはずですよ。

 

 

 

「おっ、自分いま緊張しているな・・・ってことは自分のパワーを最大限発揮するチャンス!」

 

 

 

※1ちなみに緊張でお腹が痛くなることを、英語で”butterflies in one’s stomach(胃のなかにいる蝶)”と言います。

 

※2 Jamieson, Jeremy P., Wendy Berry Mendes, Erin Blackstock, Toni Schmader. 2010. Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE. Journal of Experimental Social Psychology 46(1): 208-212. https://dash.harvard.edu/bitstream/handle/1/4214916/Mendes_ReappraisingArousal.pdf?sequence=2

 

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文責 荒井